5 月 11 2012
「相手の気を感じ取る」
「相手の気を感じ取る」
福岡教育大学
楢崎 教子
先日、福岡教育大学の女子柔道部員1名と共に沖学園高等学校へ出稽古に行って来ました。沖学園は、女子48kg級で高校生ながら全国体重別柔道選手権大会で優勝し、一躍脚光を集めた松田邦恵選手の出身校です。打ち込みが始まり、何気なく練習を見ていると小柄な女子中学生の動きが目に留まりました。体重は40kgくらいしかないのですが、フットワークが非常に良く、打ち込みのスピード・テンポ・正確さなど、すべてにおいて釘付けになりました。このように才能に溢れた選手がいるのだと感激しました。
実際に5分間の自由練習が始まると、彼女は1本目に私のところに当たりに来ました。先程まで打ち込みの動きを見ていたので、どのくらい組んで動けるのか大変興味がありました。その際、私が組んでどのくらい動けるのかということはすっかり忘れていました(笑)。小柄な彼女は、フットワークが良いだけでなく、組み手も素早く、現役時代に感じた一瞬も気が抜けない感覚が甦りました。この感覚は、私が12年前に現役選手として試合をしていたときに確かに感じていた感覚でした。それは、長年のライバルだったキューバのベルデシア選手と対戦したときの感覚に近い、何か鋭い『闘争心』のようなものを感じました。
私は12年前のベルデシア選手との対戦で何を感じていたのでしょうか。彼女の気魄、闘志、気性、殺気、闘争心、負けん気・・・。私がベルデシア選手に感じていたのは、一瞬の油断もできない『緊張感』や『緊迫感』、さらに今にも何か事が起こりそうな切迫した『危機感』を感じていたのです。それは、組み手や双手(もろて)刈りを含めた上下に翻弄される攻撃の素早さにありました。つまり、組まないとマズイ、投げられるという『恐怖感』をひしひしと感じていたのです。
その人の立ち居振る舞いを見ていたら、その人の人柄を垣間見ることができます。また同様に、その人の柔道スタイルを見ていたら、その人の気性、気質、こだわり、柔道哲学または人生哲学を感じ取ることができます。例えば、足を取ってでも勝ちたいと思う人は、勝つことだけに執着しているため、見苦しくても関係ありません。何が何でも勝つことに価値があると考えます。そういう思考であることが、柔道スタイルより推察されます。
一方、勝ち方にこだわる人は、“一本を取る”ということにこだわり、風格が漂います。ただ勝つということにこだわるのではなく、「なぜ勝ちたいのか?」、「なぜ金メダルを目指すのか?」、「なぜ柔道をしているのか?」など、その人の人生観や価値観と深く結びついています。
今回、沖学園の中学2年生の小柄な柔道選手に出会ったことで、私が選手時代に感じていたとても大切な感覚を思い出すことができました。彼女の今後の活躍に大きな期待を抱くと同時に、福岡教育大学の柔道部員たちに「相手の気を感じ取る」ことの大切さを伝え、自分の柔道に生かしてほしいと思っています。


